「映画を楽しむ本」&「恋について語ってみよう」
visit:2008/08/19
大きい特集コーナーがあるのが好きで毎月行っている杉並区立方南図書館、2008年8月の特集は「映画を楽しむ本」、そして「恋について語ってみよう」です。
まず一般書架入ってすぐ左の小さい特集コーナー「方南図書探偵団!」のテーマが「恋について語ってみよう 」。う~ん、読むだけじゃなくて「語ってみよう」ときましたか。私、自分を棚に上げて目だけ肥えてしまったせいか、語るようなことが最近ないのですが…(笑)。
挙げられた本は、『ナラタージュ』(私もこれは読みながらボロボロ泣きました)、『A2Z』といった恋愛小説から『恋は、あなたのすべてじゃない』のような恋愛に関するエッセイまでありますが、1冊を除いた全てが貸出中。やはりこうした本は人気がありますね。
その残った1冊を手に取ってみたのですが、これが思いのほか面白かった。『恋に効く!えんむすびお守りと名所』という本で、目次を見ると「勇気を出して踏み出したい」→三重県猿田彦神社、「逆境の恋に立ち向かいたい」→愛知県笠寺観音、「一方的な恋を卒業したい」→和歌山県道成寺、「おいしい料理でもてなしたい」→千葉県高鳴成神社 といった具合にケース別に神社が紹介されているのです。これ、どうせライターさんがこじつけたんだろうと思いきや、全てがそうではないんですよね(でもやはり大部分はこじつけというか、別にそのケースに絞る意味ないよね、という感じなのですが 笑)。
この最後の高成神社は、その名も「料理上達御守」というお守りがあるところで、料理人がよくお参りに来るところだというし、港区玉鳳寺には「御化粧延命地蔵」という地蔵があり、そばに置いてあるおしろいでお地蔵さんのどこかをはたくと、自分のその部分が綺麗になるのだとか。実際の神社も、ご利益が「縁結び」のような漠然としたものだけでなく、もっとピンポイントなものがあるんですね。あと、島根県の熊野神社の「縁結びの櫛」はご利益を抜きにしてもデザインが可愛くて、欲しくなっちゃいます。
奥の大きい特集コーナーは「映画を楽しむ本」。方南図書館の図書館だより「方南BOOKステーション」の同コーナーは、手抜きかと思うくらいあっさりしていますが(笑)、館内の特集コーナーは映画に関する様々な本がぎっしり並んでいます。
映画評論家による映画紹介本も面白いけど、赤瀬川準『あ、またシネマ彗星だ』、色川武大『映画放浪記』、沢木耕太郎『世界は「使われなかった人生」であふれてる』であふれてる」のように、作家の書いた映画紹介本・映画にからめたエッセイは、自分が既に観た映画でも「この人はどう書いているだろう」という楽しみがありますね。
映画監督が自ら書いた本もいろいろあって、大林宣彦『ぼくの青春映画物語』、『チャップリン自伝―若き日々』、岩井俊二『トラッシュバスケット・シアター』、黒澤明『蝦蟇の油―自伝のようなもの』など。『仁義なき映画論』はビートたけしが他人の作った映画を評した本なのですが、毒舌炸裂でいいですね~。最初の節で伊丹十三の「あげまん」のことを言いたい放題言っているのですが、第2節の角川春樹監督「天と地と」ではもう「前回『あげまん』の悪口を言ったのは失敗だった」(=「天と地と」に比べたら「あげまん」はいい映画だと言っていいくらい「天と地と」がダメダメだ)なんて言ってます(笑)。
映画に関する本を集めれば、和田誠さんのイラストが表紙になっている本が絶対ありますよね。このコーナーにも『それはまた別の話』という、キネマ旬報で連載された和田誠と三谷幸喜の対談を単行本化したものがありました。毎回1つの作品を取り上げるもので、「十二人の怒れる男」「アパートの鍵貸します」といった古い作品もあれば「ダイ・ハード」「トイ・ストーリー」のような新しい(1996年6月から1997年5月の連載なので)作品もあり、ストーリーはもちろん、小道具やセット、役者の立ち位置についてまでも二人で語りつくしています。特に「十二人の怒れる男」は、三谷さんが「12人の優しい日本人」を作ったこともあって、かなり細かいところまで見ていて、この本を片手に再度「十二人の怒れる男」を見るのも面白そう。
俳優・女優を取り上げた本も盛りだくさん。小池真理子の『恋愛映画館』に掲載されていた豊川悦司の若い頃の写真を見ていたら、今はすっかりシャープさがなくなっちゃったよなぁ、なんてしみじみ思ったり(笑)。あと、女優に生きた『女の一生―杉村春子の生涯』と、大橋恭彦さんのできた奥様というイメージの強い『沢村貞子という人』が並べて置いてあったのも面白かったですね。特集コーナーは、分類番号順や著者名順にする必要がないので、配置などでぜひ遊んで欲しいです。
特集コーナー下段には、アニメや特撮に関する本が表紙を見せて並べてありました。『特撮美術』という本は、成田亨氏が自分の関わった特撮について、絵コンテなども掲載して素人にもわかりやすく書いた本。映画の特撮の話も面白いのですが、最後の方にこぼれ話的に掲載されている映画以外の話もいい。「突撃!ヒューマン!!」(タイトルもすごいな)というテレビ番組の話があって、これ、怪獣モノなのに公開生放送なんですよ。文章を読む限りいろいろ大変な中(実際3ヶ月で打ち切りになった)、ヒーローがキラキラ光るように作れたことにはすごく満足しているようで、こちらも楽しい気分で読めます。
つい長くなってしまいましたが、本を読まないと知らないような裏話もあれば、人によって全く異なる映画評など、映画に関する本はどれも楽しいですね。気をつけるべきは、ネタをばらしている文章を映画鑑賞前に読んでしまって後悔することのないよう、まえがき等をしっかり読んで、ネタバレがありそうだったら避けることでしょうか。映画を観る前にも、観た後にも、本を読んで楽しみましょう!