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下落合図書館さんぽ ふわっといい香り

visit:2025/09/23

先日借りた本を返しに下落合図書館へ。図書館に入りながら返す本を鞄から取り出していたのだが、カウンターに待っている人が数人並んでいたので返すのは後回しにして棚を見ることにする。以前なら数人待っているくらいなら構わず並んだかもしれないが、最もよく利用する地元の江東区が全館で投入口に入れればいいだけの自動返却機を導入してすっかりそれに慣れた今は、内容によっては1人の用件に時間がかかることもあるカウンターの列に並ぶなんて嫌だと思うようになっている。予約も、昔ながらのカウンターで図書館カードを見せて職員に予約本を取り出してもらう方式の家から一番近い図書館ではなく、家からの近さでいったら三番目だが利用者が自分で予約本を探して貸出手続きをする予約コーナーがある図書館を予約受取館にしているくらい。行列嫌いの私としては、待つことを避ける仕組みが広まるのは嬉しい限りだ。

少し待てばまたカウンターが空くだろうと1階にいることにして、奥にある「介護・高齢者支援コーナー」の棚を見る。ここは介護・高齢者支援にずばり当てはまるジャンルの本があるというかたちではなく、0 総記・1 哲学・2 歴史…の図書館分類に沿って高齢者や介護する側の人向けの本をピックアップした棚だ。具体的に挙げると、0 総記には『大きな字でわかりやすいTwitterツイッター入門』『認知症予防におすすめ図書館利用術』、1 哲学には『60歳からはやりたい放題』『フランス女性は80歳でも恋をする』、2 歴史には『自分史の書き方』…といったラインナップ。高齢者・介護者向けに絞っているから冊数が少なくて1類の下の段にもう3類が来ているため、『フランス女性は80歳でも恋をする』の下に324相続・遺言の本が並んでおり、恋はしても財産はそう簡単に譲るなよという警告のような配置ににやりとしてしまう。

「高齢者コーナー」ではなく「介護・高齢者支援コーナー」なのでサポートする側の人のための本もあるし、新宿区が行っている認知症サポーター養成講座や高齢者見守りキーホルダー配布サービスに関する情報も紹介している。ホームヘルパーや訪問介護のサービス提供者を対象とした雑誌「へるぱる」、介護現場でのレクリエーションに関する情報誌「レクリエ」などもあり、こんな雑誌が存在するということを初めて知った。

図書館巡りをしていて広がる知見の一つが雑誌に関することで、売れる・売れないで取り扱いを判断する書店と違って図書館は雑誌も含めて各ジャンルの資料を一通り揃えようとするから、あまり知られていない雑誌に出会うことができるのだ。

ふと見たらカウンターが空いていたので、本を返して2階の書架へ。今日はデジタル依存に関する本でいいものがあれば借りようと思って図書館に来た。私はデジタル依存の傾向は全くなく、むしろ気付くべき通知をスルーしてしまうほうを気を付けないといけないくらいなのだが、今年に入ってシステム開発に生成AIを使うようになり、先日込み入った開発をした際に、GitHub Copilot(AIでコーディングを支援するツール)にコーディングさせる→できあがったものが何か違うので私も手を入れる→実行してもうまく行かないのでGitHub Copilotに修正させる→やはり何か違うので私も手を入れる→やはりうまく動かないので…を繰り返してやっとうまくいったということがあった。完成したときに「GitHub Copilotと一緒に頑張って完成させた!」とまるで人と一緒に一仕事成し遂げたような気持ちになり、その直後に、ツールにすぎない代物に仲間のような気持ちを抱いているこの感じはマズいのではという警戒心が湧いてきて、情報武装するべくその手の本を読もうと思ったのだ。デジタル依存は私の体験のような擬人化による肩入れというよりはドーパミンに依るものだろうから少しずれている気もするが、デジタルデバイスに囲まれた時代に読んでおいて損はないだろう。

下落合図書館では、脳に関する本が491 基礎医学、精神医学に関する本が493 内科学にあって、探すとしたらそのあたり。いずれも基礎医学・内科学に該当する本が著者頭文字の五十音順に並んでいるので、脳に関する本、精神医学に関する本というかたちでまとまってはいない。それでも、ダニエル・Z・ーバーマン他『もっと!愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』とデイヴィッド・J.ンデン『快感回路』が並んでいるのが目に入り、この2冊を手にそばの椅子に座る。

今回の私は、デジタル依存に結びつくサービスを提供している会社の手口を知っておきたいという動機を中心に本を探しているが、ざっと見た限り2冊とも依存が起きる際のメカニズムを解明する内容で、私の求めてる内容とは少し違う。491基礎医学の他の本も見てみるがピンと来る本はなし。493 内科学で『依存症ビジネス』という本を見つけてこれぞと思ったが、サービス提供者側に取材するなり調査するなりした内容というよりは、アルコールに依存した過去を持つ著者が、これも気を付けるべし、あれも気を付けるべしと注意喚起する内容で、これはこれで知っておいて損はないが、やはり手口を知っておきたいという私のニーズからはずれている。まだ手に取ったことはないが書評などで知る限りおそらくこれが一番私のニーズに近いだろうと思われる『僕らはそれに抵抗できない』は残念ながら下落合図書館にはない。

どちらの棚にも求める本がなかったので、文庫本の棚へ行く。図書館は、491 基礎医学のようにジャンルによる分類とは別に、文庫本はここ、新書本はここ、と本のサイズによって棚を分ける場合があり、新宿区立図書館は文庫本を別にする配置方式なのだ。だから、下落合図書館にある491 基礎医学の本を全部見たいという場合は、ジャンルで分類された491 基礎医学の棚と文庫本の棚の中の491 基礎医学の両方を見なければならないということになる。残念ながらそちらにも読みたい本がなく、今日は何も借りずに帰ることにする。

1階に降りてCDの棚を眺めていたら背後からふわっといい香りが漂う。何だろうと振り返ると「しおりに香りをワンプッシュ」というコーナーがあり、香りのするスプレーとしおりが置いてある。その場でしおりにスプレーを吹きかけて自由にお持ちくださいということのよう。私自身は今日何も借りないこともあり使ってみなかったが、他の人が使ったことでふわっと一瞬漂う香りに気持ちが和む。本は借りなかったが、いい気分をもらった感覚で図書館を後にした。