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体験ビブリオバトル@武蔵野プレイス

―2013年12月21日のイベント
visit:2013/12/21

図書館、生涯学習センター、市民活動センター、青少年センターといったさまざまな公共施設の要素を一つの施設に融合させた武蔵野プレイスでは、2013年12月7日から23日まで「プレイス・フェスタ2013」と題して、施設の特性を活かしたさまざまなイベントを開催しています。そのイベントの一つとして、2013年12月21日に「体験ビブリオバトル@武蔵野プレイス」が開催され、私も参加してきました。

図書館でのビブリオバトルは、少数の発表者と多数の観覧者でおこなう「イベント型」が圧倒的に多いのですが、今回のイベントは「体験ビブリオバトル」とあるように参加者皆が発表者となるイベントでした。といっても、初心者も気軽に参加できるような構成にしてくれていて、初めにビブリオバトルとは何かの説明を行い、次にイベント型ビブリオバトルを皆で体験、そして最後に小グループに分かれて全員が発表者となる「コミュニティ型」でのビブリオバトルを行うというかたち。イベントの最初に普及委員さんが「ビブリオバトルを見るのも初めての方は手を挙げてください」と言った際、会場の半分弱の方が手を挙げていたのですが、皆さん気軽に楽しんでいた様子で、私も一緒に楽しんできました。

§ 説明&エキシビション

まずは、2時間のイベントの前半で、ビブリオバトル普及委員の方による説明と、ビブリオバトル普及委員や図書館職員さんを発表者としたエキジビションゲームを観覧しました。説明といっても、ビブリオバトル自体そんなに複雑なゲームではない(ルールなどは公式サイトをどうぞ)ので、15分程度で終了。説明後に質問を募っても特に出なかったくらい、ルール自体は本当に簡単なんです。

続くエキジビションゲームでは、3名の発表者さんに対して、その場にいる全員が投票します。ジャンケンで決まった順番で紹介された本は、ノンフィクションの『繁栄からこぼれ落ちたもうひとつのアメリカ』、ライトノベルの『カブキブ!』、人気作家・東野圭吾さんのエッセイ集『さいえんす?』とジャンルもさまざまで、どれも読みたいくらい。投票の結果、図書館職員さんが紹介した『カブキブ!』がチャンプ本に選ばれました。

発表を見ていると、本の情報だけでなく、その本との出会いを聞いているうちに発表者さんの人となりが垣間見えるのも面白く、ビブリオバトルが「プレゼンのスキルを競う弁論大会」などではなく、「コミュニケーションゲーム」であるというのを実感できます。好きな本について楽しそうに語る姿を見ていると、こちらまで楽しくなってくるんですよね。

こんなかたちでビブリオバトルを理解したところで前半終了。後半の体験タイムを前に15分休憩があり、コーヒーや紅茶が飲めるティーバーまで用意されていました。都内の図書館をあちこち回っている私ですが、図書館イベントで参加者にティーバーを用意してもらえるなんて初めての体験。

ティーバーの設置は、休憩時間で皆が正面に向かって座るかたちから少人数グループが輪になって座るかたちに配置変更することもあって、一度席を立ってもらう仕掛けとしての意味もあったと思いますが、参加者同士で話したり、普及委員や職員さんに疑問点を聞ける時間にもなってよかったです。このうち誰と一緒のグループになるんだろうというワクワク感もあって、期待が高まる時間でした。

§ 皆でビブリオバトル体験

休憩後は4~5人ずつのグループに分かれて皆でビブリオバトルを行いました。前のモニターに表示されるタイマーに合わせて、一斉に発表が始まります。グループのメンバーは初めて会う人同士ですが、本について話すと決まっているので何でもありのフリートークよりもかえって話しやすいくらい。好きな本についての話を通じて、本以外の好きなことなども話題に出てくるので、あっという間に打ち解けられます。

5分間の発表後のディスカッションタイムも、大人数のイベント型だとかっちりした「質疑応答」になりがちなところ、少人数のコミュニティ型だと発表本・発表者を中心としてフリートークが広がっていく幹事で、それが楽しいんです。ビブリオバトルって、ニュースなどでイベント型が取り上げられることが多いのですが、創案者の谷口忠大氏が書いた『ビブリオバトル』を読むとわかるように、どちらかといえばコミュニティ型の方が本来の姿なんですよね。コミュニティ型を体験すると、ビブリオバトルがコミュニケーションゲームだということを実感します。

発表&ディスカッションが一通り終わったところで、グループごとに投票を行い、チャンプ本を決定。その後、各グループでチャンプ本に選ばれた人が全体に向かって一言ずつコメントしました。すると、グループのうちの一つでは、5人全員がチャンプ本に選ばれたとのこと。ビブリオバトルでは、同数票だった場合、複数冊がチャンプ本になっても構わなくて、5人全員がチャンプ本というのは互いに違う本に投票して皆1票ずつ獲得したというというわけです。そのグループには前半でビブリオバトルの説明をしてくださった普及委員さんが入っていたのですが、彼でさえ5人で全員がチャンプ本に選ばれたというのは初めて見たのだそうです。

今回のイベントでは、各グループでチャンプ本に選ばれた人に、図書館からオリジナルクリアファイルのプレゼントがありました(写真)。私のグループでは私を含めて2冊チャンプ本が出て2人ともクリアファイルをいただきましたし、5冊チャンプ本が出たグループはメンバー全員にクリアファイルが配られていました。私にその権限はありませんが、できることなら参加者全員にクリアファイルを差し上げたらいいんじゃないかと思うくらい、どこも盛り上がった様子でした。

実際、ビブリオバトルって読むべき本や優れた発表を表彰するのが目的のイベントではなく、発表・討論・投票を通じて、本のついての話が聞けたり、発表者さんの考えや体験や聞けたり、それについて感想を伝えたりできるのが楽しいゲーム。チャンプ本にならなかった発表も聞いた人には確実に届いています。その点、コミュニティ型は参加者同士が近くに集まっているので、「これに投票したけど、それも面白かった」と発表者さんに伝えやすい。このイベントの数日後に、twitterでビブリオバトルは目的ではなく手段ではないかと言っているツイートを見かけたのですが、まさにそう。人と繋がる、より深く知る「手段」なんだと思います。

と、いったかたちで、楽しい時間はあっという間に終了。終了後もしばらくの間場所を開放して、参加者同士が引き続き話せるようにしてくれたのもよかったなあ。私は都内の図書館でのビブリオバトルイベントにあちこち参加していますが、チャンプ本を決定したらサッと終わってしまうケースが多く、発表者と観覧者が話せる時間を作ってくれたらいいのにと残念に思っていたんです。その点、今回のイベントは、途中の休憩も含めて、参加者同士が話したり普及委員の方々に話し掛けたりできる時間を作っていて、とてもよかったです。

社会全体が「限られた人が情報発信できる時代」から「誰でも情報発信できる時代」へと変わり、交流の場が広がりつつあるなか、図書館もそうした時代に合った姿へと変わっていくでしょう。そんな時代に、利用者同士が本でつながるイベントとして、ビブリオバトルはとてもいい企画だと思います。現に、私はこのイベントのときが初めての武蔵野プレイス訪問だったのですが、ビブリオバトル後に館内を回っていたら、同じグループになった人と違うフロアでまたお会いして、互いの発表本の話でまた盛り上がってしまいました。1度目の訪問で知り合いができてしまうなんて、これぞビブリオバトルの威力。利用者の交流の場を作ってくれるイベントはとても楽しく、またぜひ開催して欲しいです。