第38回 ふるさとの新聞 元旦号展
visit:2018/01/09
小平市のtwitterアカウントでは小平市立図書館に関するつぶやきをときどきつぶやいており、私もフォローしています。2018年1月4日、まだ小平市立図書館が年末年始の休館中の日にtwitterを覗いて目に留まったのが、ふるさとの新聞の元旦号を集めました!全国各地の主要地方新聞を展示します。というつぶやき。面白そうな展示だと思い、小平市中央図書館まで行ってみました。
図書館入口を入ってそのまま進んだ通路にテーブルを並べ、その上に置かれた地方新聞は、その数何と48紙。全国各地の主要地方新聞を展示といっても、せいぜい十数紙くらいかなと想像していたので、こんなに集まっていることに驚いてしまいました。私が行ったのは1月9日で、全て出揃っていたとは思いますが、「届いたものから展示します」と書いてあり、もしかしたらこの後更に増えたかもしれません。
集まっていた新聞の一部を紹介しますと、北から北海道新聞、釧路新聞、十勝毎日新聞、苫小牧民報、福島民友、福島民報、千葉日報、神奈川新聞、新潟日報、伊勢新聞、日本海新聞、京都新聞、山陰中央新報、高知新聞、徳島新聞、長崎新聞、佐賀新聞、宮崎日日新聞、南海日日新聞、琉球新報など。説明によると、この展示は地方新聞各社からの寄贈によって成り立っているそうで、これら各社のご厚意も大変ありがたい。ちなみに、福島民報と福島民友は、ふるさとふくしま帰還支援事業(地元紙提供事業・地域情報紙発行事業)により、元旦号展に限らず日常的に中央図書館の新聞コーナーで閲覧できます。
元旦の新聞の第1面は、普段のように前日や当日のニュースが載るというより、前年の振り返りや当年の展望など、長い時間枠での注目記事が掲載されるもの。例えば、私が購読していて手元にある日経新聞の元旦の1面トップは、デジタル技術により、グローバリゼーションが大企業だけのものではなく、小企業や個人にとって身近なものになっているという内容の記事です。
地方新聞にとっても、そうした観点で、かつ、その地域にとって注目の記事が1面に来ると思いますが、こうして全国の地方新聞の元旦号を並べると、1面の違いがわかって面白い。例えば、同じ北海道でも、北海道新聞の1面トップは「道ーサハリン ビザ免除検討」、十勝毎日新聞の1面トップは「大樹射場 法人設立」。射場というのはロケットの射場のことで、家に帰って調べてみたら、十勝毎日新聞はネット上でもこの構想に関する特集コンテンツを配信しており、大きな期待を寄せていることが伝わってきます。
京都新聞の1面トップ「不感地帯の安らぎ」は、上で紹介した日経新聞の1面と真逆の記事。滋賀県大津市の携帯の電波が入らない地域の(=不感地帯)古民家で暮らす夫婦を取材したもので、ネット疲れとは無縁な生活のよさを紹介しています。同じ1面には「京都文学賞創設へ」という記事もあり、国内だけではなく海外の作品も対象に含める文学賞にすることを検討するのだそう。この記事の中にあった「山村美紗さん、万城目学さんら現代の京都の街並みや風俗を織り込む作家も増えている」という文には、え、そこは森見登美彦じゃないの?万城目さんよりも森見さんの方が京都度数が高いような気が…と思ってしまいました。
琉球新聞の1面トップは、「嘉手納騒音 合意破り前提」。合意破りもひどい話ですが、そもそも米軍機の飛行に日本の国内法が適用されず、協定でしか縛れないという点にも問題があり、沖縄の問題ではなく日本の問題として考えるべき記事だと思います。また、今上天皇の退位が来年に決まったことをうけ、どの新聞でも元旦号で平成に入ってからの天皇陛下のご公務を振り返る記事を掲載していましたが、琉球新聞ではやはり10回の沖縄訪問をはじめとした、広島、長崎、東京大空襲慰霊堂、サイパン、パラオなどへの慰霊の旅に大きく焦点を当てた内容。対して、震災やその他自然災害の被災地を抱える地域の新聞では、被災地訪問へより焦点を当てた内容になっているなど、違いがみられました。これは、地域による視点の違いでもあるし、新聞によるまとめ方の幅広さの分だけ、今上天皇が行ってきたご公務も幅広いということだと思います。
こうして挙げると、1面には堅い記事載せる新聞ばかりと思うかもしれませんが、岩手日報の1面トップは、今年からメジャーリーグのロサンゼルス・エンゼルスに移籍する大谷翔平の特集記事。何を1面にするかは本当にさまざまです。
地方新聞同士で連携している企画もあり、挑戦しようとしたものの難問で断念したのが、高知新聞・四国新聞・山陽新聞・新日本海新聞・山陰中央新報による「南北軸厳選50問クイズ」。5紙がそれぞれの地域の一つの県を決めて、その県に関する3択クイズを10問出題する企画なのですが、3択と思って油断することなかれ、なかなか難しい問題なのです。
例えば、山陰中央新報が出題する島根県の問題「陸上男子100メートルで10秒の壁を初めて破った桐生祥秀のコーチは出雲出身の誰?」、四国新聞が出題する香川県の問題「昨年誕生から10周年を迎えた香川のブランド魚「オリーブハマチ」は、餌にオリーブの葉の粉末を何%以上添加するのが条件か?」など。紙面に切り取れるマークシートがあり、応募された回答のうち正解が最も多かった人に、 トップ賞として1万円以上の特産品がプレゼントされるそうですが、50問の採点となると集計も大変そう。でも、ご当地検定のようなノリで挑戦したくなる企画です。
また、じっくり見ると面白かったのが、地元財界人からの新春メッセージ。財界人のラインナップの多くは、全国的な会社のそのエリアの支社長や、地方銀行の頭取、地域メディアの社長といったところですが、その中に、例えば琉球新聞には、ミネラルの多さで全国的に人気が出ているぬちまーすの社長など、抜きん出ている地元企業の社長さんも顔を覗かせている。知らない地域企業もあったりして、東京にずっといたらわからないことがいろいろあると思い知らされました。
展示を見に行ったときは気が付かなかったのですが、あらためて、小平市立図書館ウェブサイトのこの行事に関する告知を見ると、「第38回 ふるさとの新聞 元旦号展のお知らせ」とあり、その継続の長さに驚きました。元旦号展だと1年に1度しかできないなので、間に開催しなかった年がなく毎年行っていたとしたら、1981(昭和56)年から行っていることになります。そうではなく、地方新聞を集めた展示で元旦に限らず開催していたとしても、第38回という継続性は素晴らしい。過去の開催については、昔の図書館だよりなどを見ればわかるのではないかと思うので、いつか調べてみようと思います。
今回の2018年の展示は、小平市中央図書館では1月11日まで、その後、小平市立上宿図書館で1月13日から17日まで、小平市立大沼図書館で1月20日から25日までと、3館を巡回して展示します。地方新聞だけでなく、地方出版社が出版している郷土色豊かな図書もあわせて展示していたのですが、私は新聞をじっくり見ただけで2時間弱かかって精力を使い果たしてしまい、図書まで手が及びませんでした。ご興味ある方は、私が見られなかった図書も合わせて、バラエティ豊かな地方の発行物をぜひ楽しんでください。