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もう一つのイソップ物語

杉並区立中央図書館 編

杉並区立図書館では、区民と本を結ぶ企画をときどき行っていて、この「もう一つのイソップ物語」もそんな企画から生まれた本。多くの人に親しまれているイソップ物語を題材に、それを発展させて自由に作った話を、杉並区内在住・在学・在勤の中学生から18歳までの人を対象に募集してまとめたのがこの本なのです。

題材とされているイソップ物語は「ウサギとカメ」「北風と太陽」「セミとアリ(「アリとキリギリス」としてよく知られている話)」「金のたまごを生むメンドリ」「キツネとぶどう」「キツネとツル」「狼と羊飼い」「コウモリとイタチ」「ゼウスとカメ」の9編。募集要項が

もとの話を次の中から一つ選びます。
①「セミとアリ」 ②「北風と太陽」 ③「金のたまごを生むメンドリ」 ④「ウサギとカメ」 ⑤ ①から④以外でもイソップの話であればかまいません。

というものだったので、冒頭の4つの話のどれかを選んでいる人が圧倒的に多いですね。どんな話か覚えていなくても、本書には元の物語のあらすじが書いてあるので大丈夫。

掲載されている作品は22編で、原作よりハッピーな結末になっているものもあれば、より皮肉を効かせたものもあり、どれも個性豊かです。

「アリとキリギリスin高円寺」は、アパートの隣同士の有川さんと桐原くんの物語。有川さんは隣近所に配慮してヘッドホンで音楽を聴いていたから、桐原くんが彼女のお気に入りの曲を知っているはずがないのに、その曲をそこで歌うなんて運命的(笑)?! まあ、運命は大袈裟ですが、1曲の歌が有川さんのささくれだった心をなごませてくれるという、読んでいて気持ちのいい話です。

「ウサギとカメ」を題材にした「落語・兎と亀」もいいですね。こちらも宇佐美さんと亀吉さんという人間の話になっていますが、最後のサゲは落語としてもきれいなサゲになっています。本当に落語家さんに演じて欲しいですね(笑)。

この企画、図書館という、どちらかというとお堅いイメージのあるところが行った企画なのに、そんなに優等生的なストーリーとは限らないものもちゃんと掲載されているのがいいです。一番最初に掲載されている「うさぎとスッポンとたぬき」なんて、ある意味残酷、でも現実ってこんなものかもと思ってしまう作品。こういう作品を一番最初に掲載するところに、本当に自由な発想をして欲しいという主催者のメッセージが感じられます。