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移転前の旧・品川区立大崎図書館

旧・大崎図書館は2018年3月31日を最後に移転のための休館に入りました。その後、現在の大崎図書館が2018年6月1日に移転開館しました。

以下は、移転前の旧・品川区立大崎図書館の訪問記です。

移転前の旧・品川区立大崎図書館 訪問記

last visit:2012/07/08
§ 図書館の場所

大崎図書館の最寄り駅はJR大崎駅。南改札を出て右に進み、ThinkParkTower右手前のエスカレーターで下に降ります。向かって右側に周り込む形で、ThinkParkTowerの先に進み、十数段ほどの階段を上がって、左の坂を上がっていくと、右に大崎図書館があります。

大崎は、昔はそうでもなかったのに、今はビルがこれでもかっていうくらい建ってますね。大崎図書館も、ThinkParkTowerの裏にひっそりと建っている雰囲気です。

§ 1つの図書館内に2つの図書館?

大崎図書館は、1階が通常の図書館、2階がビジネス支援図書館という、ちょっと変わった図書館です。貸出手続きはそれぞれでしないといけないのですが、同じ図書館カードで借りれるし、返却はどちらでも可能。要は、同じ建物内に1階と2階で別の図書館があると思えばいいのかな。貸出手続きをせずに図書館から本を持ち出せないけど、返すのは「品川区立図書館ならどこで返却してもいい」というルールがあるので、どちらでも構いません。予約の受取館を大崎にした場合は、1階の図書館の方になるのでご注意ください。

§ 1階の様子

1階は、入って左がカウンター。カウンターの左の一帯が児童コーナー。カウンターの正面から奥に向かって、CD・カセット、雑誌コーナー、閲覧席と並んでおり、その右に書架が広がっています。全体的にL字状になっていて、L字の角にあたるところにカウンターがあり、そこから一方が児童コーナー、もう一方が一般書架になっているというとイメージしやすいでしょうか。

入口入って右には、可愛いキャラクターのイラスト入りの大崎図書館の看板が立てかけてあります。このキャラクターは、大崎のキャラクター「大崎一番太郎」なんですね。ビジネス支援図書館併設ということで格好いい図書館をイメージして入ると、目がくりっとしたイッちゃん(=大崎一番太郎)がいるのでびっくりします。ちなみに2011年のゆるキャラ(R)さみっとでのイッちゃんの人気は194位だったそうです。頑張れ、イッちゃん(笑)!

2階にビジネス支援図書館があるものの、1階でもビジネス系の本を平均程度に所蔵しています。2階で充実させているジャンルの棚には、「関連図書が2階にあります」というラベルが貼ってあるので、お探しの棚にそうした注意書きがあったら、ぜひ2階へも足を運びましょう。

日本の小説・エッセイは一緒にして、著者名の五十音順に並んでいます。但し、複数の著者による作品集は、タイトル名を元に、五十音順の並びに入れられています。例えば、立松和平(タテマツ ワヘイ)が書いたの本の隣に、11人の作家による『堕天使殺人事件』(ダテンシサツジンジケン)という本が並び、その隣に田中ケンスケ(タナカ ケンスケ)が書いた本がある、といった具合になります。外国の小説は、英米文学・ドイツ文学・フランス文学…と国別に分類された上で、著者姓名の五十音順に並んでいます。

一般書架はジャンルの別に棚に並んでいますが、A4程度以上のサイズの本は「中型本」として最下段に並んでいます。また、かなり大きい大型本は閲覧机のそばの棚に分類されています。つまり、ムック本などは最下段に置かれているケースが多いので、探すときには注意してくださいね。

壁沿いの棚の上の段には、文学全集がずらっと並んでいます。上段用のハシゴが設置されており、利用者も自由に使えますが、「上の本をとる際には、気軽に職員にお申しつけください」と書いてあるので、重い全集をハシゴを使って取るのはあぶないと思う方は、遠慮せずに職員さんにお願いしましょう。

中高生コーナーは、児童コーナー入って右手前と、一般書架の文庫棚の隣の2箇所に分かれているのでご注意を。中高生向け単行本は児童コーナーの方に、中高生向けの文庫本と漫画本は一般向け文庫棚隣にあります。中高生向け資料は、どちらにあるものも本の背の上部に半透明の緑のテープが貼ってあるので、それが目印になります。もちろん、中高生以外の人もこれらの本を利用できます。

館内にはちょっとした気遣いがあり、例えば、コピー機のそばには細長い紙があり、飛び飛びのページをコピーする際にはしおりとして使えるようにしてくれています。また、小雨が降っているときに行ったら、傘を持たずに図書館に来た人のために貸出用の傘も用意していました。思いのほか多くの冊数を借りてしまったときは紙袋をもらえる(大崎図書館に限らず、品川区立図書館全館で用意しているし、こうした紙袋は目黒区立図書館でも見かけます)ので、そちらもご利用ください。

また、リーディングトラッカーの貸出もしています。リーディングトラッカーは、今読んでいる行にフォーカスする道具で、視覚障害をお持ちの方や集中力が落ちているときの読書の助けになるもの。使ったことがない人もぜひ図書館で試してみてください。

そうそう、大崎図書館は閉館音楽が映画「太陽がいっぱい」のテーマ音楽なんです(曲名がわからなかった私に教えてくれたmizuさん、ありがとうございます!)。あの物悲しい音楽は閉館音楽に相応しいですね~。閉館まで待てない人は、大崎図書館所蔵CDでもこの曲が収録されているものがあるみたい(「永遠の映画音楽 ベスト」)なので、そちらをどうぞ。

§ 児童コーナー

児童コーナーは、手前側が絵本、奥に読みものやちしきの本などがあるという配置。おはなしの部屋は別室になっています。絵本は、日本のおはなしも外国のおはなしも一緒にして、おはなしの作者の姓名の五十音順に並んでいます。

奥の中央付近の棚には、英語で書かれた絵本と児童向け読みものもあります。大人向けの外国語図書は大崎図書館にはありませんが、赤毛のアンシリーズや大草原の小さな家のシリーズ、メアリーポピンズシリーズなどの原書は、大人でも読み応えがあるのではないでしょうか。

おはなしの部屋とは反対側の窓際には、「てっちゃん文庫」という大型絵本コーナーがあります。このコーナーは、三和テッキ株式会社さんからの寄付によるコーナーで、会社名と電車線金具の開発・製造・販売を行っている会社であることから「てっちゃん文庫」という名前なのでしょう。絵本の内容は、鉄道関連のストーリーというわけではなく、いろんな絵本があります。「てっちゃん文庫」は品川図書館でも見たことがあるので、更に寄付していただけたということなのでしょうか。図書館に寄贈をしてくれる企業って素敵ですよね。企業の社会貢献活動はいろいろなかたちがあると思いますが、こうした図書館への寄付も広がって欲しいと思います。

§ 2階のビジネス支援図書館
※2階のビジネス支援図書館は、2015年4月1日からビジネスコーナーになってしまったそうです。以下は、ビジネス支援図書館だった時代の訪問記となっています。

2階は、図書館事務室などのいくつかの部屋に分かれているうちの一部分がビジネス支援図書館になっているという形です。ビジネス支援図書館エリアに入ると、すぐ右にカウンターがあり、その先にネット閲覧PC、その先に書架があり、一番奥には持参パソコンも使える閲覧席。カウンターの右の部屋は講習室で、講習会がないときには閲覧室として利用できます。

ここのビジネス支援図書館は、ビジネス情報を広く収集しているというよりは、特に「ものづくり」に注力している図書館です。東京都内で製造業の中小企業が多い地域というと大田区が真っ先に思い浮かびますが、大崎駅と大崎図書館の間にあるThinkParkTowerが明電舎の工場跡地であることからも察せられるように、品川区もものづくりをする中小企業が少なくないんですね。品川区のビジネス支援図書館は、そうした企業の支援に力を入れた図書館。最近は図書館でのビジネス支援事業も増えていますが、このように特定業種に力を入れている図書館のビジネス支援は珍しいです。

例えば、所蔵新聞は「日経産業新聞」などのビジネス紙はもちろん、「半導体産業新聞」「オートメレビュー」「鉄鋼新聞」「電気新聞」「電波新聞」など専門紙がたくさん。雑誌も、「企業業務」「人材教育」などの総務系の雑誌から、「金属」「日経ものづくり」「配管技術」「電気計算」「表面技術」「プラスチックス」「油空圧技術」などの技術系専門誌がずらっと並んでいます。書籍の棚も、広くビジネス一般の資料もありますが、機械工学、電気工学、貿易実務、制御工学、工業所有権など、工学関連の書籍の方が多いです。

製造技術に関する情報などは、時代に追いつき、更に先取りしていくには、常に新しい情報に目を光らせてなければならないでしょうが、関連する新聞・雑誌や新刊書も漏らさず購入するのは、中小企業にはキツイ面もあるかと思います。その点、区立図書館が産業支援として、そういう資料を収集してくれると助かりますよね。

また情報収集のほかにも、中小製造業者を対象にした「ビジネスよろず相談」や、 区内製造業を担う若手経営者や後継者の方を中心にした「大崎ものづくり道場」なども行っているそうです。講習室で月1回行われている講座も製造業を中心とした内容で、参加費も無料ですから、製造業の中小企業の方はぜひこのビジネス支援図書館を活用して欲しい!

§ 図書館や公共施設は活用してこそ!

ビジネス支援図書館に限らず、一般図書館や、図書館以外の公共施設もそうですが、たとえ通勤通学経路にあったとしても利用する習慣がないと存在にさえ気付かないこともあります。お勤めしていると意識しないかもしれませんが、源泉徴収で自動的に納税しているわけですから、公共施設のサービスを利用しないのは、お金だけ払いっぱなしになっているようなもの。それではもったいないですよね。

特に、ビジネス支援サービスは、サービスを受けて収益が増えれば納税額も増え、サービス提供者である自治体にとっても、受け取る側の利用者にとっても有益なこと。ビジネス支援図書館エリアの入口手前右には、区内のものづくり関連の新聞切抜きが掲示されているのですが、ビジネス支援サービスを利用して、あなた自身が新聞に載る日がいつか来るかも?!ぜひとも、この珍しい、ものづくり特化ビジネス支援図書館を活用しましょう。

移転前の旧・品川区立大崎図書館 特集・行事・図書館だより感想記

  「ものづくりと品川」
―2007年3月の展示