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CurrentIcon 展示「みなさまよりオススメの本を教えていただきました」「あなたにとって「読書」とはなんですか??」

―2017年6月後半~7月の展示
visit:2017/06/17

両国駅の近くにある墨田区立緑図書館は、2階の階段踊り場向かって右の壁に、棚2つ分を占める展示コーナーがあります。おそらく毎月第3木曜の図書整理日に入れ替えていると思うのですが、2017年6月の図書整理日後に行ったときの展示が、利用者の方からのアンケートをもとにした興味深い内容だったのでご紹介します。

§ 緑図書館利用者のお薦め本

大人の背より高い棚2つ分の展示コーナーは、3つのテーマの展示が合わさるかたちになっています。まず、右列上部を使った展示が「みなさまよりオススメの本を教えていただきました」。緑図書館の利用者にお薦め本を投稿してもらったものをまとめたコーナーなのですが、ジャンルも様々で、新しい作品から古くに発行された本まで、発行年も幅広いです。図書館は人気本には予約がたくさん入ってすぐに読めないため、図書館をよく利用する人は最新作や流行りものに偏らず、読書の範囲が広い傾向があるだろうと思うのですが、まさにそんな感じのラインナップ。

お薦め本のなかで一番古い作品は、カフカ『変身』と内田百閒『百鬼園随筆』。シュールな小説と軽妙な随筆は対照的にも思えますが、せわしない現代と全く違う世界に浸れる本という点では共通しているかも。

また、複数冊がお薦め本として挙がっていて人気の高さが窺えたのが、村上春樹と重松清。村上春樹は『ねじまき鳥クロニクル』と『もし僕らのことばがウイスキーであったなら』、重松清は『とんび』と『きみの友だち』が紹介されていました。

私が面白そうと注目したのは、柳田邦男氏の『マリコ』。展示コーナーでは本の推薦者からのお薦めコメントも読めるのですが、推薦文がタイトルにもなっているマリコさんを中心にしたものであるのに対し、実物の本の表紙の袖に載っているあらすじを読んだところ、「マリコ」にはその他に秘められた意味もあるとのこと。展示本は借りられますが、展示として実物の本があったほうがいいと思ったので、緑図書館ではなく地元の図書館で借りようとしたところ、江東区立図書館には展示されていた版は所蔵していないことが判明(文庫版と大活字本は所蔵あり)。緑図書館のこの展示が終わってから、墨田区立図書館で借りようかと思っています。

もう一つ、これも実物と合わせて面白かったのが『MAPS』。お薦めコメントのなかに「児童向けの本であるけれど大人がよんでもとてもためになる」「とにかく細かいですが、読み終えた頃には世界のことがたくさんわかっている」とあるので、一体どんな本なのかと思ったら、世界地図に絵を描き込むかたちでそれぞれの地域の文化を紹介する本でした。大きいサイズなので借りると大変ですが(江東区立図書館で借りたときには、「持ち運べる袋をお持ちですか」と聞かれたほど)、イラストで埋まった地図を眺めているだけでわくわくします。

そのほか、シリーズものもあれば、自然科学や自己啓発本、ハードボイルド、ファンタジーなど、本当にさまざまなお薦め本があります。緑図書館は1階に予約棚、自動貸出機、自動返却機とセルフで図書館を利用できるシステムが完備しているため、1階で用を済ませるだけの人もいると思いますが、この展示では同じ緑図書館を利用している人のなかでもこれだけ読書のバラエティがあるということが感じられます。

§ あなたにとって「読書」とは

緑図書館利用者からのお薦め本の下にある展示も興味深く、そちらは何かというと、「あなたにとって「読書」とはなんですか??」という質問への図書館利用者からの回答。こちらは「緑図書館の利用者からの回答」とは書いていなかったので、お薦め本と一緒に緑図書館利用者さんに聞いたのか、墨田区立図書館全体で回答を集めたのか、それともまた別のところで集計したのかは不明ですが、どれもそれぞれ一理ある回答で、展示の前で一人読みながら頷いてしまいました。

読書とは何かという、シンプルで、でも、深い質問に対し、同じくシンプルに答える人もいれば、言葉を尽くして答える人もいる。例えば、一言での回答では「いやし」「ひまぶつし」などがあって、前者の答えは「こんな本を読んでいる人なのかな」と想像が膨らみますし、後者の答えは単に読書に対する思いだけでなく、人生観も含まれているようにも感じます。

展示コーナーにあった回答の中で、私自身の「読書」観に一番近いのは「活字を通して、自分を客観的に見つめなおすこと」かな。私は、本に書かれていることそのものも面白く読みますが、それと同時に、書いてあることに対して自分がどういう感想を抱くかということにも注目しながら読んでいます。他の回答では、「これに費やす時間がなければ、もっと人生を有効に過ごせるのに・・でもないとダメ」という意見には、活字中毒っぷりが表れていてニヤリとしてしまいました。「良い意味で現実逃避です」という回答にも、そういう面もあるよなあと共感してしまいます。

全部で24ある回答は、違う考えを持ついろいろな人の考えを集めたというよりは、どれも読書の一面を言い当てているもので、とても興味深いです。この展示がいつからいつまでなのか明記はないのですが、毎月第3木曜の図書整理日に展示入替をしていると推測すると、2017年7月19日まで展示していると思われます。皆さんの読書観を知りたい方は、ぜひ緑図書館2階の展示コーナーにお寄りください。

§ 本を求める人が集まる場としての図書館

ここで話を変えて、私の個人的な緑図書館での体験を書きます。緑図書館は2016年9月1日から2017年1月4日まで、改修工事のために長期休館しました。その「明日からしばらく図書館には入れなくなる」という2016年8月31日の閉館間際に、緑図書館に行ったんです。長期休館中は臨時窓口が設置されたので、本を予約して借りることはできたのですが、「本棚から好きな本を手に取って読む」ということはその日を最後にしばらくできなくなる日です。

そんな日だからたくさん借りようと本棚を物色している人が多いのかなと想像していたら、予想とは少し違う雰囲気でした。むしろ席に座って手に取った本を集中して読んでいる人が多くて、しばらくの間できなくなる「本棚に囲まれた場所での読書」にどっぷり浸っている様子。緑図書館は学習室が3階にあり、図書館の本を読まずに勉強する人は2階の一般書架フロアにはあまり来ないのですが、その日は特に「本棚に囲まれた場所での読書を、長期休館前に堪能しに来た人が集まっている」ような空気で、こちらもつられて本への集中力が高まるような、とてもいい雰囲気でした。

個人的にそんな体験をしたので、今回の展示で利用者の皆さんのお薦め本や「読書」観を見たとき、2016年8月31日の緑図書館の様子が浮かびました。その日に限らず、図書館は皆が思い思いの本を選んで読む場所で、でもそれぞれの人が何を読んでいるのか、読んで何を考えているのかは、普通に図書館を利用しているだけではわからない。その、いつもは見えない本や考えが垣間見えるアンケートが、私はとても面白く感じました。見えない知り合いが少しだけ顔を見せたみたいな、不思議な感覚です。

展示コーナーでは、上記2つの展示に加えて、左半分側で「永井荷風のながめた下町」というテーマ展示もしていましたが、文章が既に長くなっているので、そちらは省略。そちらのように、普段は本棚の中の1冊として収まっている本を、テーマを切り口にスポットを当てるような展示もいいですが、いつも同じ図書館を使っている人たちの考えがちら見えする企画は面白いのでぜひこれからも別の質問などしてみて欲しいです。東京都内の図書館をあちこち行っている身としても、図書館はどこも同じようで、でもよく見ると地域の個性があるという図書館巡りの面白さを知っているので、こうした企画で緑図書館の個性を皆さんにも感じていただきたいです。

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