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文京区立天神図書室は、2015年3月31日を最後に閉館しました。
以下は、閉鎖前の文京区立天神図書室の訪問記です。

閉鎖前の文京区立天神図書室 訪問記

last visit:2014/08/24
§ 図書館の場所

天神図書室は湯島駅から歩いて7分ほど。上野公園の南に位置するこの辺りは地下鉄駅が密集している地点なので、末広町駅・上野広小路駅・上野御徒町駅などからも歩いていける距離です(詳しい道のりはこちら)。

湯島のこの辺りは普通のホテルからラブホテルまでホテルがたくさん並ぶ通りで、こんなところに図書室があるのかとびっくりします。聞いた話では、この場所に天神図書室を設置したのは、これ以上のラブホテル営業を制止したいという意味もあったよう。というのも、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)や、東京都の風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例によって、図書館の周囲では風俗営業店の設置が制限されるというルールがあり、それを使おうというわけです。

ただ、図書館の設置以前から営業を行っている店舗に関しては制限が適用されないため、既に天神図書室の周囲にあるラブホテルは営業を継続しています。これまた聞いた話ですが、東日本大震災の後では数時間での利用ができるラブホテルが、仮設住宅で暮らす人にとって、ゆっくりお風呂に入ることができ、かつ家族だけになれる場所としても利用されたそうで、ラブホテルは規制すべきと一概に言えない面もある。図書館と風営法の関係についてあれこれ考えさせられるのが天神図書室の立地です。

とはいえ、図書室を出て右(北)に230m行けば湯島天神、左(南)に450m行けば湯島聖堂と、学問にゆかりのあるスポットも近かったりして、いろんな側面のある地域です。湯島界隈散歩の寄り道スポットとして図書室に行くのもいいですね。ちなみに、天神図書室には駐輪場がなく、湯島界隈サイクリングの寄り道スポットにはできませんので悪しからず。

§ 図書館内の様子

天神図書室は、エミナンス湯島のテナントの1つというかたちです。入口から見て一番奥の区画がそれで、最初に来たときは、本当にこんなところに区の図書室があるのかと思うかもしれませんが、信じて奥に入ってみてください(笑)。

図書「室」という名前からも、またビルの事務所フロアのテナントの一つということからも察せられるようい、面積は大きくありません。図書室入口を入ると、右にカウンターがあり、左側一帯が書架。書架のうち、手前側が児童向けで、奥が一般書架、左奥に新聞・雑誌コーナーがあります。閲覧机は、正面奥に4席、新聞・雑誌コーナーに6席、それとは別に新聞・雑誌コーナー内に持参PC利用可能席が2席で、これに児童用机席を合わせても計16席。実にこじんまりとした図書室です。

そうは言っても、児童エリアに靴を脱いであがる読み聞かせスペースなどもあり、狭いスペースにギュッと本や情報を詰め込んだ空間という印象です。絵本は、日本のおはなしも外国のおはなしも一緒にして、出版社の五十音順に並んでおり、同じ出版社の中での順序は特にないようです。児童向け読みものは、日本人作家の作品も外国人作家のものも一緒にして、タイトルの五十音順に並んでいます。建物内の通路に面している窓には、馬場のぼるさんの『11ぴきのねことあほうどり』の絵が描かれていて、子どもにとっても楽しい空間なんじゃないかな。

§ 一般書架

図書室自体が小さいので、一般書架・児童書架の明確な境目もありません。そして、狭い中でうまく収納するがゆえに、必ずしも分類記号の順番通りになっておらず、見つかりにくい面もあるのでご注意ください。例えば、音楽に関する本は、CDが並ぶ棚の最下段にあり、CDと音楽本が近いという便利さもある一方、最下段の本は見逃しがちです。

日本の小説とエッセイは一緒になって、著者姓名の五十音順に並んでいます。同じ棚に著者でまとめているなかでも、小説は分類記号ラベルなし、エッセイは「914」というラベルがついているので、例えば群ようこさんのように小説もエッセイもたくさん出している方の本のうち、小説が読みたい・エッセイが読みたいというときはラベルを参考に本探しができます。また、アンソロジーなど複数の著者による小説・随筆集は、「合集」として、小説の並びの先頭にまとめて置いてあります。外国の小説は、「英米文学」「フランス文学」等の国・地域別に分類された上で、著者姓名の五十音順に並んでいます。

小説の棚には「文学賞コーナー」があり、芥川賞・直木賞・山本周五郎賞・本屋大賞・このミステリーがすごい!大賞を受賞した作品が並んでいます。主要な賞を受賞した小説は、図書館の予約待ち人数もものすごい数になりますが、今年の受賞作ではなく過去の受賞作なら、こうして棚に残っていることも多い。少し昔の懐かしい受賞作を読んでみるのもいいですね。また、その横には「時代小説コーナー」があり、池波正太郎・平岩弓枝・藤沢周平などの時代小説作品に加えて、時代小説大賞・朝日時代小説大賞・本屋が選ぶ時代小説大賞の受賞作が紹介されています。時代小説大賞はもう終わってしまった一方、本屋が選ぶ時代小説大賞は2011年から始まった賞。賞の歴史をたどるのも面白そうですね。

また、棚にある本をよくみると、ときどき「新聞書評掲載本|読売|2007/12/16」といったラベルが貼られている本があります。これ、新聞の書評に掲載された本に関して、掲載紙と掲載日付をラベルにして貼っているんですね。文京区立図書館では東京の主要6紙(朝日・読売・日経・毎日・産経・東京)の書評に文京区立図書館での蔵書状況を記入したものを全館に用意してあり、過去のものもファイリングしているので、読もうかなと思った本にこのラベルが貼られていたら書評にあたってみることができる。読んでみてから新聞書評にあたって、自分の感想と書評での評価の相違を見るのもいいですね。

文庫の棚を見ていて、なるほどアイデアだなと思ったのが、佐伯泰英の文庫本の扱い。時代小説の文庫本を多数出版している方なので、棚に占めるスペースも大きいのですが、小さな図書室である天神図書室にはスペースがあまりないわけです。そこでどうしたかというと、手作りのポストカード用アルバムに表紙コピーと請求用カードを入れて、文庫本棚に入れている。表紙コピーを見るとどんな本があるのかがわかり、借りたい場合は請求用カードをカウンターに持っていけば借りられるんですね。省スペースになるだけでなく、貸出されても表紙コピーはアルバムに残っているので、貸出中のものも含めて図書室で所蔵しているお二人の本の全てがわかる。情報としては検索機を使ってもわかることですが、表紙があると作品イメージがつかみやすいです。

また、カウンター向かって左の閲覧机がある辺りには、湯島地域・文京区内を紹介するコーナーがあり、「散策」「坂道」「歴史・文化」「文学」という切り口で関連本を並べているほかに、旧岩崎庭園や小石川後楽園など区内の観光スポットのパンフレットも置いています。この棚の付近の壁にも、 本郷図書館が作った「谷根千ゆかりの文人まっぷ」などが掲示されており、文学散歩ゴコロがうずきます。

そして、そうした地域マップの中でひときわ目を引くのが「本郷 菊坂・真砂町 人物往来絵図」「谷中霊園に眠る人マップ」といった、味わいある手描きの著名人イラストがぎっしり書き込まれたマップ。それらの地図には「品川海風塾 鈴木清彦」と署名があるので、「品川海風塾」でネット検索してみたらこちらの学習塾がヒットしました。代表の方が鈴木さんとおっしゃる方のようなので、おそらくこの塾を運営している方がイラストマップの作成者さんだと思うのですが、玄人はだしのイラストマップでついつい見入ってしまいます。

§ ビジネスパーソンが集まる、小粒でもピリリと辛い図書室

天神図書室があった頃の、文京区立図書館HP内の説明には、「山椒は小粒でもピリリと辛い!そんな地域に密着した、存在感溢れる図書館となるよう心がけています」とあるのですが、確かに小さいからといってちまちまと必要最小限のことをしているような図書室ではない、むしろ隅々まで目が行き届き小回りの利く図書室という雰囲気なのです。

それを感じるのはカウンターの処理の素早さ。図書館で資料を借りたり返したりする際は、単に図書館システムで貸出・返却処理をするだけでなく、返却された本に何か挟まったりしていないか確認したり、CDは借りるときも返すときもケースと中身が合っているか確認したりと作業がいろいろあって、何かと時間がかかるもの。でも天神図書室の場合、少しでもカウンターが手間取ろうものなら、すぐにバックヤードから職員さんが手伝いに出てくるんです。事務室内にいてもカウンターの状態を察知して対応する様は、まるで忍者のよう(笑)。

これは、たまたま気が利く職員さんがいるといったことではなく、きちんと心掛けてそうしていると思われます。というのも、天神図書室は貸出・返却処理の端末が1台だけで、どんなに行列ができても「お待ちの方はこちらへどうぞ」ができず、その1台でどうにかするしかない。なので、行列ができる前の、行列の気配が立上ったくらいの段階ですぐに対応するんです。

実は、この天神図書室、昼のビジネスパーソンの利用がとても多く、12時から13時の利用が最も多い図書館なのだとか。だからおそらく、待たせないでさっとカウンター処理するワザが毎日鍛えられているのだと思います。実際、私が平日の昼休みの時間帯に行ったときも席は満席で、同じ会社の人と思われる人が「あら、あなたも来てたの?」と会話している光景を目にしました。昼休みに図書館に行くような人が集まるオフィス、仕事の合間の雑談などでも面白かった本の話で盛り上がったりするのでしょうか。何だか、羨ましいなあ。

そういう特性もあり、一般書架の一番手前(CDと同じ棚)には「ビジネス支援コーナー」も設置されていて、「起業」「人生訓」「マナー・敬語」「リーダー論」「企画・プレゼン」「営業・交渉」「経理・簿記」「就職・転職・資格」「文章・文書の書き方」など、通常の図書館分類だとあちこちに分散する項目の本が一箇所に集められています。ビジネス単行本だけでなく、パソコン関連書籍や、「アイデム」「クリエイト」といった求人誌、ビジネス雑誌のバックナンバー、日本商工会議所や中小企業庁の広報誌などもこのコーナーに集められています。転職関連本などは読んでいるのを同じ会社の人に見られたらマズいだろうから、会社の昼休みに借りるとしても、図書室内に同じ会社の人がいないか確認してから手に取ったほうがいいですね(笑)。

一見ひっそりとした図書室ですが、実は平日昼間は大賑わい、ロケーションとしても湯島界隈散歩の合間に寄れそう、と八面六臂の活躍をしている図書室…というのは褒めすぎかな(笑)。カウンターの素早さに敬意を表して、“忍者図書室”と名づけたいところです。検索機の脇で配布している、天神図書室の図書館だより「J in NET」も、図書館の裏技や湯島界隈のスポット紹介などあり面白いですよ。散歩の途中や昼休みなどにぜひぜひお寄りください。

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